第5章 【桜色】桃色診断書
~Side轟~
妙な肌寒さから目を覚ますと
隣に居るはずのハイリが居なくなっていた。
昨夜
散々「ソファーで寝る」と言って聞かなかったハイリを
無理やりベッドに引き込んで離さなかったのは俺な訳だし、キレちまったのかもしれねぇ。
そう思って身体を起こすと、予想に反して同じ部屋
しかも目の前に背を向けて座っていた。
「ハイリ?」
「んー?」
「何してんだ?」
「ん、お母さんに手紙をね…っと。
終わり! おはよ、轟くん!」
昨日の慌てふためいた「おはよ」も可愛かったが
今日のはもっと可愛いと思う
柔らかい春の日差しの様な笑顔。
「コーヒーを入れてくる」といってキッチンに向かう背を見送りながら、この状況に自然と笑みが漏れる。
ふと視線を落としてテーブルを見れば
当たり前のように便せんは置かれたままにされていた。
(手紙か……。)
先程は、あまりに自然すぎて疑問に思わなかったが
何かにつけて電子機器で済ませることの多いこのご時世、
手紙ってのはかなり珍しい。
未だ畳まれておらず封筒で文面が隠されている所を見ると、これから封をするんだろう。
「…………。」
気にはなるが流石に無断では読めねぇ。
かと言いつつ目は封筒からはみ出ている最期の一文を
しっかり追っていた。
彼女になれるように頑張るね!
ハイリ