第5章 【桜色】桃色診断書
~Sideハイリ~
心の中では絶叫だ。
確かにそっちも盛ってるけど、
そんな事はどうでも良い!
もう一度LINEに表示された『彼女』の二文字を追って溜め息をつく。
もう勝手に彼女面してしまおうか…
そんな事まで考えてしまっていた。
(大体…お隣さんに轟くんが会ったのは家を出た後だし、この大荷物を持って出た理由は他にあると思うんだけどな…。)
チラリと彼の後方を見れば「合宿にでも行くの?」と問いたくなるほどの大荷物。
何も知らないお姉さんには通る理由かもしれないけれど、この内容が嘘だってことは明らかだ。
本当は別に泊まる所があったのかもしれないけれど、
もしウチに泊まるつもりで家を出たのだとしたら
大事な弟さんをかどわかしたと思われても仕方がないんじゃ…?
期待の中によぎる不安
考えるほどに深みにはまっていく。
『はぁ……どうしよう。
なんかそういう犯罪なかったっけ…?』
『問題ねぇ、返事きた。』
ホントこの人はどこまでも飄々と……
かどわかした側も未成年の場合、どうなるんだろう?
頭の隅で考えながら
目の前に置かれたLINEの文字を追って
予想以上に軽い返信に苦笑が漏れる。
『姉弟って言っても、だいぶ性格違うんだねぇ。』
『まーな。』
山ほどの疑問を飲み込むのも慣れて来た。
そんな自分に笑いながらまた食事へと戻る。
開かれたままのLINEの画面は
今夜はもう、それ以上文字を並べる気配はなかった。
【彼女!? 焦凍の!?
挨拶したいから近々連れてくること! それが条件。】