第31章 【空色】タヒる…
~Sideハイリ~
「どした?」
「ハイリ?」
「ごめん!そんなに悩むとは思ってなくて――…。」
その声は言うほど入って来てなかった
次に取るべき行動がわかったけれど
とうの問題はまだ解決してない
(いつ聞こうか…。)
無意識に口元に添えてた右手を掴まれても
肩を揺さぶられても
焦点は宙に定まったまま
フィールドにもスタンドにもなかった。
だけど
空気が奮う
焦点の合ってないぼやけた背景の
光度が増す
――――BZZZZZZ
降る雷
幾本もの光の柱が
騎馬を刺す
打たれた騎馬は身を静止させ
頽れる間もなく固まった
地を這う氷が
生き物のように足元に食らいつき
騎馬の足を
地へと繋ぎ止める
その光景に意識は奪われども
一体何が起こったのか
ひらり、はためく布から現れた1騎の騎馬
その騎手を見るまでは
そう思ってた。
(上鳴くんの放電だったのね。
八百万さんに絶縁体シートまで作らせちゃって…。)
相性か
意外だと思っていた上鳴くんはこの為か
確実に足を止めてから凍らせる
見事にメンバーの“個性”を使いこなしてるのは
緑谷くんだけじゃない。
だけどなぜだろう
緑谷くんの時のように
素直に凄いと思えないのは
(顔が怖いよ…焦凍…。)
確かにこれは戦いだ
へらへら笑っているのもどうかと思うけど
あの顔は…スポーツマンシップに則ったモノじゃない
父への憎悪故の表情だ。
胸が痛い
なんせ、あの顔を
こんなに長時間しているところを見るのは
初めてだったから
地を這う氷は障害物レースで見せた薄氷なんてものじゃない
焦凍の感情をそのまま表したように尖った氷が円を描く
地に描かれた氷竜が形作るのは
円形のフィールドだ
線だけで出来た元のフィールドと違って
囲うように出来上がった氷の壁が
外と内を遮断する
緑谷チーム
轟チーム
1対1の小さなフィールドの出来上がりだ。