第31章 【空色】タヒる…
~Sideハイリ~
熱気が立ち込める体育祭
誰もがフィールドを見下ろして
それぞれにエールを送る
戦士の声は館内にこだまして
音が途切れることは無い
それは乙女も同様に
桃色の空気も一切褪せる気配が…無い
「普通なんでもない人を噛まないよねぇ?」
「そりゃそうでしょっ!」
「シチュエーション、気になるぅ。」
わざとらしく上げられた語尾
そろそろと向けられた6つの瞳
横目でチラリと見てるだけなのに
なんなのこの存在感
私はここで初めて気がついた
そして後悔した
(しまった言わなきゃよかった…。)
焦凍のネタを警戒し過ぎて
爆豪くんが疎かになっていた
これはアレだ
何でもない話でも恋バナに結び付けたーい
と言うアレだ
(そうか、あれか。)
そもそも付き合ってる人が居るというのに
知ってるくせに、何故そうなった。
違う、待って、置いてかないで
ツッコミが追いつかない
事情を知らない彼女たちは
色めいた想像を繰り広げてるみたいだけど
残念ながらそうじゃない。
そんなもんじゃない
むしろ逆だ
これは、反論しなければ
「残念、首を噛まれたって言ってもあれは威嚇だよ。」
「「「威嚇ぅぅぅ!?」」」
同時に振り向いた三人への感想は
トリオはトリオでも漫才トリオだった
示し合わせたかのように同時にこちらを向き
三つ子かと突っ込みたくなるほど同じ顔で見る
目を点にして
バックに5W1Hを背負うこの様を見て
コントと言わずになんという。
「「「ここまで言ったんだから説明!!」」」
声も息もぴったりだ
食いかかって来る3人に
思わず身を引いた。
ドン引きの語源はここからくるのか
なんて考えてしまう頭が
観戦への集中力を
大幅に削ぎ落としてくれる
視線だけはフィールドへと戻したけれど
この程度の集中力だと変に視野が広くなる
例えば…
透ちゃんの騎馬
浮いたハチマキの下に騎馬の3人しか見えないってことは
あれ服、着てないんだよね
裸で騎馬にまたがってるんだよね
前騎馬の耳郎さんは良いとして
右翼左翼の口田くんと砂藤くん
恥ずかしくないのかな…
あ、赤くなってる…気がする
とかね。