第31章 【空色】タヒる…
~Sideハイリ~
緑谷くんを支える騎馬は意外な組み合わせだった。
左翼にお茶子ちゃん
右翼にサポート科の発目さん
前方、常闇くん
トータル10,000,325ポイント
騎馬戦とはよく言ったものだ
開始同時に上がる叫びはドラマで見る合戦そのもの
構図はまさに多対一
このポイントじゃ、しょうがない
敢えて的にする為に振られたポイントと
作られたようなルール
上を行くものには更なる受難を
これぞPlus Ultra!
雄英の校訓だ。
先駆けとなったのは2組の騎馬だった
透ちゃんの騎馬と
B組、鉄哲くんの騎馬
狙われた首は
フィールドラインを背にして
背水の陣を決め込むのだろうか
そんな訳がない
これは雄英体育祭
武器は弓矢や鉄砲じゃない
“個性”だ
ずるりと傾く狙われた騎馬
“個性”によって沼化した地にぬかるんでいく
騎手は手綱を強く引き
選択するは逃げの一手
手綱に馬は天を仰ぎ
ジェット噴射という名の尾を靡かせて
先駆けの頭上、はるか上を飛び越えた。
あのジェット噴射は
サポート科の発目さんのものだろうか
続く攻撃
耳郎さんのイヤホンジャックを跳ねのける
常闇くんのダークシャドウくんを見ながらフムと唸る。
(……上手いな。)
“個性”の制御で言えば
クラスどころかヒーロー科最下位であろう彼だけど
見事にメンバーを使いこなしてる
緑谷くんはいつもそうだ
仲良い人だけじゃない
周りの人をよく見てる
情報を取り込んで
それを組み立てるのがかなり早い。
(ちょーっとオタクの域に達してるけどね。)
トクトクと鼓動のリズムが上がってく
何これ、初っ端から見どころ満載じゃない
毎年見るのとは全然違う
テレビ越しじゃないからか
クラスメイトだからか
道を定めたからか
眼下で繰り広げられる合戦に
私だったらどうやってあのハチマキを奪おうか…
なんて叶うはずのない夢を見た。