第31章 【空色】タヒる…
~Sideハイリ~
「ハイリちゃん?」
だから
返事がワンテンポ遅れようがしょうがないんだ。
「は…い?」
3人の丸い目がゆーっくりと細められていく
にんまりと緩む口に添えられるのは、指先3本
揃いも揃って
これは、得意じゃない流れだ
「えと、1000万ってのは
穏やかじゃない、よね…?」
どうにか話を戻したいトコだけど
3対1じゃ勝ち目ない。
私のコメントに何の反応も見せず
既に予選敗退した今時女子コーセーは
ピンク色の話に花を咲かせ始めた。
「やっぱ2位の人が彼氏なんだ?」
「ほらーだから言ったじゃん!」
「だって付き合ってないって言ってたじゃん!」
なんでそうなるかな
確かに言ったけどさ
そして、事実だけどさ
体育祭中だよ?
しかも雄英高校の体育祭っ!
とうに桜は散ったというのに花真っ盛り
人の彼氏の話題で盛り上がっている。
下じゃチーム決め兼、作戦タイムだというのに
こっちは絶賛恋バナ中だ
本人、蚊帳の外だけど。
「ハイリって歯形つけたりしてるしさ
彼だと、ぽくないじゃん?
てっきり1位の人かと思った。」
「1位って1000万の人?」
「違う違う『俺が一位になる』の人。
彼ならやりそう。」
「うん、彼にも噛まれたことあるな。」
「「「あるの!?」」」
「あるね。」
あるさ
言っちゃえば焦凍が噛みついたのは
爆豪くんの影響だとすら思ってる。
突然輪に加わった私が意外だったのだろうか
トリオからカルテットになったというのに
綺麗なハモリは3重奏
弾かれたソロは
退場するしかない。
(気になるケドま、いっか。)
再び3人談義が始まったのを見届けて
スタジアム中央を見下ろせば
騎馬戦開始のカウントダウン。
常にハイテンションの実況者が
揚々と鯨波を上げる。
『さァ上げてけ鬨の声‼
血で血を洗う雄英の合戦が今‼
狼煙を上げる‼‼』
ただ見てるだけなのに
私までグッと両手を握ってしまう
『いくぜ‼
残虐バトルロイヤル
カウントダウン‼』
それはきっと、カウントダウン直前
焦凍の表情が冷たく研ぎ澄まされたから
『3』
『2』
『1』
START!と
開始の合図が叫ばれたと同時に
騎馬の殆どは
一組の騎馬へと鼻先を向けた。