第31章 【空色】タヒる…
~Sideハイリ~
第二種目 騎馬戦
この文字を見た時
焦凍、大丈夫かなって思った。
だって団体戦だよ?
誰かと協力してる姿って
A組の教室に居る彼からはちょっと想像つかない
だけど意外にも
既に組は組まれてるみたいで
メンバーは八百万さん、飯田くんと来て
ちょっと意外だけど上鳴くん
明らかに…
(“個性”で選んでる…。)
他人に興味ないって
二言目にはそう言ってるけど
勝つためなら他人と協力出来るのだろうか
(器用っていうべきなのかな…。)
やっぱもう少し
馴染んだ方が良いんじゃないかなってのは、お節介かな。
本当は優しい人なんだって事
皆にも知ってもらいたい。
なんて
あまりに見つめ過ぎたのかもしれない
チームメイトと話していた焦凍は
まるで呼ばれたかの様にこちらを振り返り
迷わすことなくピタリ、私に視線を留める
バチっと音が鳴った気がした。
(嘘…っ。)
スタジアム中央とスタンド席
こちら側からならともかく
向こう側から見分けがつくものなのだろうか
しかもあの人
今の今までこっちに背を向けてたのに
膝の上に立てていた肘
付いていた頬杖は
その驚きに弾いた頬から離された
「レースの順位に比例して持ちポイントが振られてるでしょ?
それが騎馬の合計ポイントになるわけ。」
「で、そのポイント数が表示されたハチマキを
騎手が装着!」
「そのハチマキを奪い合うポイント稼ぎ…だっけ?」
隣で説明してくれている友人の声が
徐々に遠くなっていく
焦凍の周りも私の周りも人で溢れ返っているのに
何故か二人以外誰も居ないかのような錯覚を覚えた。
フッと緩んだ彼の表情は
まるで私を安心させるかの様
軽く上がった右手が
父の力は使わないと
宣言しているように見える
「ん、頑張れ。」
小さく手を振り返しながら
思わず呟いてた。
これで気のせいだったら
私、かなりの勘違い野郎だ
だけど気のせいではなかったみたい
小さく頷き返してくれて、何かを呟く
聞こえる訳が無いのに
届くのはやっぱり特別だからなんだろうか
「うん、後で…ね。」
周りの目も気にせず
笑ってしまう
だって、今の私は
周りに誰も居ない錯覚真っ最中
6つの丸い目が
こちらを向いてる事に気づく…わけがない。