第31章 【空色】タヒる…
~Sideハイリ~
「お? ハイリ来てたの?
休みかと思ってた。」
「うん、不参加には変わりないけどね。」
C組のスタンド席はそれなりに埋まっていた。
いつものメンバーの隣に腰かけながら
タハハと笑う。
不思議そうなこの目は
なにも仲の良い子だけじゃない
(見られてるなー…。)
私の動向はやはり気になるんだろう
いくつもの視線が突き刺さるのだ。
だけど一番痛い視線は
今日、ここには無くて
「あれ、心操くんは?」
「あっちあっち。」
指し示されたスタジアム中央
そこには
確かにあの葵の髪を持つ男子生徒が
気だるげに立っている。
「予選、通過したんだ…。」
予選通過者42名
内40名はヒーロー科
流石ヒーロー科への執念を燃やす男
「そ、伊達に編入生に喧嘩売って無いよね。」
そういう友人は鼻で笑っていた。
私の味方で居てくれる彼女たちにとって
たとえ同じクラスでも同じ科でも
彼は警戒対象なんだろう
(喧嘩を売る、か。)
そう、見えてもおかしくないとは思う。
だけどちょっと違う
彼が最期に言った言葉は
『何がしてぇのか知らねぇが
舐めてると本物の悪人に絡まれるぞ。』
あれは、忠告だった。
つまり
私に対して悪意を持ってる人は確かにいる訳だ。
私に大きな決断をするきっかけをくれた人
私を通してA組に大きな劣等感を抱いている人
彼にはちゃんと伝えたい。
「ヒーロー科を選ぶ事にした」って
自分の口で言いたい。
なのに
なんだかんだと忙しくて
言えないまま今日まで来てしまった。
忙しかったってのは
言い訳か
反応が怖くないかと言えば嘘になる。
「ウチのクラスじゃ心操くんだけ?」
「ウチのクラスどころか
普通科全体で心操だけ。」
この実力を見せられては尚更に
彼には私に嫌悪をぶつける
それだけの実力がある
執念もある。
(駄目だ)
彼の事を考えると
何故か暗い方へ考えてしまう
頭を振って
もう一度葵色に視線を移してみたけれど
目つき悪すぎ
笑顔怖すぎ
あれじゃ完璧ヒール役だよ
(爆豪くんとはまた違うヒール感…。)
同じ目つき悪いでも
爆豪くんと居る時は
いつもの自分で居られるんだけどな。