第30章 【空色】親拍数
濛々と上がる薄桃色の煙
一人の生徒が弾丸の如く桃色を突き、宙を割く
零れた少女の声は
何処か期待が籠っていた
「緑谷くん…っ。」
『後方で大爆発!?なんだあの威力!?
偶然か故意か――――
A組緑谷爆風で猛追―――…』
梶を取る如く抱えているのは
第一関門のロボットの装甲だろうか
それが爆風を受け
いくつもの頭の上を駆け抜ける
前を走っていた筈の生徒が
一人、二人と振り返り
三人、四人と爆風に煽られ
五人、六人が見上げれば
遂に宙を切り裂く装甲は
勢いを殺さぬまま
先頭で足を止めていた二人の少年に影を作った。
『…っつーか!!!
抜いたあああああ――――!!!』
パッと切り替わったスタンド席
映るはスタンディングオペレーション
元から立っていたハイリだが
映る観客と同じくその手を鳴らす
持っていたペットボトルが
落ちたのも気にせず
トップに躍り出た少年に拍手を送る
間抜けな音を立てたペットボトルが
虚しく床を転がっていった。
(なぜ……?)
その様を見て老婆は思う
先程まで轟が爆豪と1位争いをしていた時は
ハラハラと轟を案じていた少女が
緑谷がトップに躍り出た途端、手を叩く
「すっごい…緑谷くんらしい発想ね!」
まるで緑谷になら
負かされてもいいと思っているかのよう
見つめる瞳は案じる中にも光があり
まるで飛び立つ雛を見守る親鳥の様だ。
度重なる治療を経て
友人以上の感情でも沸いたのだろうか
轟へ向けるものとは違う眼差しは
どちらかと言えば
自分がハイリに向けるものに近かった。