第30章 【空色】親拍数
争いを辞めた元2トップが
再び1位に返り咲くため、視線を前方へと投げた
先に飛び出したのは爆豪だ
自らの爆破をターボにし、宙に舞い上がる
幼馴染の名を叫びながら空中を駆けて行く
もはや後ろを気にしている場合じゃないと
判断したのだろう
一息遅れた轟は
踏み込んだ左足から
地雷原をの上に一筋の氷道を作り、その上を駆け出した。
双方その荒さと表情に
焦りの色がはっきりと見える
轟・爆豪が追う
緑谷が逃げる
だが一度の大爆風に圧された装甲が
失速するのは自明の理
三者が並ぶ
その刹那
大きく振りかぶった緑谷が
梶にしていた装甲を地へと叩きつけ
――BooooooM‼‼‼
大きな轟音と爆風と共に
1位と2位を隔てる薄桃色の壁を作り上げた。
『緑谷 間髪入れず後続妨害!!
なんと地雷原、即クリア!!』
「――じゃ、行こうかな。」
満足気な表情のハイリは
椅子の足元に転がっていたペットボトルを拾い上げ
扉へと爪先を向けた
まだ勝負はついちゃいない
それ所かこのままではトップを掴むのは緑谷だ。
散々駄々を捏ねここに留まっていたのに
一体何故?
引き止め
そして問おうと手を伸ばしかけたが
その手は虚しく宙を掴んだだけで
すぐに下された。
折角出て行ってくれるのだ
小さな疑問一つ
解消されなくとも
おつりがくる程じゃないか、と。
老婆は笑う
閉じられたドアの音を聞きながら
昔は手に取るように分かっていたハイリの心
ちっとも見えなくなったそれは
きっと成長の証
子とは
いつまでも子供のままでは居てくれないのだ。
「やっぱり大人になってんだねぇ。」
コロコロと変わる自分の意見に
親のエゴを見た
まだ、今少しだけ
子のままで居て欲しいと
初めて
そう思ったからだ――。