第30章 【空色】親拍数
轟焦凍 “個性” 半冷半燃
右半身で凍らし、左半身で燃やす。
言葉でこそ、そう認識されているが
実際のところクラスメイトの印象は
氷の“個性”と言って良い。
それは入学直後のヒーロー基礎学で
ビル全体を氷結させたから、
というだけではなく
彼が炎を使っているところを
実際に目にした事が無いからだ。
今日もまた
ほら、と
パキパキと音を鳴らして這う氷
一人抜きん出てスタートダッシュをきったその足元から
冷気を纏う青白い道が出来上がっていく
アップで映し出されたその姿に
ハイリは黄色い声を上げた。
「かぁ…っこいいっっ!」
やってる事は昨年とほぼ変わらない
テレビ画面の前に座し
毎年やって来るこの国のお祭りを
リカバリーガールと共に観戦する。
だが
彼が映るだけでこんなにも高揚するものなのか
先程までの不機嫌はどこへやら
手元のペットボトルを握りしめ
キャーキャーとはしゃぐ
どこからどう見ても歳相応の女子高生
なのに人並の学生生活もままならない
だというのに
近くで応援できるというだけで
機嫌を直してしまったハイリは
もはや
諦めることに慣れてしまったのだろう
ペットボトルを振りながら
高揚に頬を染めている
この理不尽をあっさり受け入れている少女を
不憫と言わずになんと言う
そうは思うが…
(なんとも不憫さを感じさせない子だね…。)
こうもキャッキャとされては
同情したくとも出来そうにない。
ハイリの心の底もさることながら
ペットボトルの中身が心配でしょうがない
自分等がそう仕向けたにも拘らず
リカバリーガールは深い溜息をつき、問うた。
「スタンドに行かなくていいのかい?」
「うん、誰も居ないし
スタジアムのビジョンで見るくらいならここで見る。」
「流石に一人は目立つ」と添えた
少女の視線が画面から逸れる事は無い。
その中の氷率は相も変わらず
高いままだからだ。