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【ヒロアカ】UAシンドローム【轟焦凍R18】

第30章 【空色】親拍数




「つまんない。」


ぷぅっと膨らんだ頬に
八の字に垂れた眉

への字に曲げた口も
そんな顔を俯ける様も

散々見飽きたと言って良い


それしか覚えていないオウムの様に
同じ言葉を繰り返すハイリ

そろそろ訪れ始めた頭痛に
相澤は自分の隣に座る男
プレゼント・マイクに目を向けた。

いつもならこの男が宥め、慰める

だが今は実況の最中だ
出来ないのも致し方ないだろう

相澤はその包帯の隙間からかろうじて覗く目を細め
膨れっ面のハイリを見やった。

白い布に覆われた顔にそれは
憂いていようが眠かろうが
怒っているようにしか見えないだろう。

特にこの少女からしてみれば…


「悪かったと言っただろ。」


目が合った瞬間
ハイリが言葉を飲む音が聞こえた気がした

いつもの事だ

ハイリにとって
自分は畏怖の対象でしかない

だから、口を噤ませるだけなら
自分の方が適任だ。

噛み合った少女の視線は
気まずさから、すぐに逸らされ壁に留まった

不満はそれでも潰えないのだろう
飲み込んだ「つまんない」が
形を変えて返ってくる


「C組、なら…出場できると思ったの。」


ぽつりと返された反論に
男は詫びた
もう一度、心の中で


(悪かった。)


警備体制を盤石にしても尚
注目を集めるA組としての出場は厳しいと
その分
他の科なら注目から逸れるだろうと

そう考えてやや強引にC組へと戻し
参加させてやるつもりだった。

その配慮が仇となった

相澤は仏頂面の裏側へと
苦笑を隠す


例え僅かでも憂いを悟られる訳にはいかない
それは自分の役目ではないのだから、と。




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