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【ヒロアカ】UAシンドローム【轟焦凍R18】

第29章 【空色】心温







――翌月曜日 PM13:30




休日を挟んだその日

雄英高校のとある一室で
項垂れた影とその頭を撫でる小さな影が向かい合っていた。





「―――つまり、僕も一緒に謝って欲しいと
そういう事かい?」





場所は校長室
だがその肩書を持つ者が掛けるはずの椅子に座るは
亜麻色の髪を結いもせず垂らす少女

そして
その髪を撫でる者こそ
本来座するべき


「はい…お願い、します。」


校長・根津だ。





少女の膝の上に向かい合うように座り
両手を上げ見上げる様はもはやヌイグルミ

持てる全ての愛らしさを振り撒いて
少女を笑わせようと頭を撫でる

そこには
校長という肩書も威厳もない

誰も居ない部屋でヌイグルミに話しかけている女の子の絵面が、この場所を異なものにしていた。


「気にする事は無いさ!
潜入捜査では連絡がつかないのも無理はない。
彼女もプロヒーローだからね。」


ヌイグルミは声のトーンを上げる
尤もな理由を付け足して
大袈裟なまでに明るく大きく

少女が自分に敬語を使った
その事実が焦りをもたらしたのだ



自分と少女はそんな関係じゃない
少なくともハイリにとってはそうじゃない



だが、少女の声は
反比例して暗く、小さくなっていくばかり


「怒ってるだけかも…。」

「彼女が君に怒った事なんて
ただの一度もないだろ?」

「だけど、せっかくの授業…」


サボってしまったと
微かな声で告げる


大好きな姉に
ミッドナイトに嫌われたのかもしれない


項垂れる少女の瞳は
先週ここを訪れた時と違って
不安と寂寥に満ちている


(それだけじゃないだろうに…
普段のハイリならここまで臆病にはならない。)


根津は
焦りを心に押し留め
表情を変えぬままに口を開いた。


「そうだとしても
ちゃんと理由を話して謝れば大丈夫さ!」


先週の事だ
突然尋ねて来ては
『個人授業を付けて欲しい』と言い出した

迷いのない
覚悟を決めた瞳

頑として聞き入れなかった
自分さえ説得できなかった
ヒーロー界への道

自分たちにとっては願ったりな変化だが
喜ぶ前に、まず驚いた。

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