第29章 【空色】心温
~Sideハイリ~
私とエンデヴァーさん…ときて
焦凍がここまで怒る理由とくれば
一番に思いつくのは家にお邪魔した時のアレだ
『コイツの事知ってんだよな?
“個性”が気に入らねぇか?』
あの時も
こんな空気を醸し出していた
鋭く光るはナイフのような瞳
言葉通り身を切られるようだった。
焦凍の事情は知ってる
父親であるエンデヴァーさんを嫌悪するのもわかる。
だからその矛先が私に向いたとして
怒るのもわからない、でもない。
だけど
(仮にこの予想が当たってたとして
私は気にしないんだけどな…。)
理由はさて置き
我が子が付き合っている相手について
親が興味を持つのは自然な事
個人差はあれど、どこも同じ
ましてや焦凍は将来有望なヒーローの卵だ
悪い虫がつかないようにってのは
親心…じゃないかな?
事実
ウチだって
焦凍の事を調べてたみたいだし
いきなりやってきて
どさくさに紛れて番号まで交換して
それを後で知った私が怒った時
焦凍はそんな私を宥めるくらいだった。
同じでしょ?
(とは言ってもきかないだろうけどね…。)
こんな情報を分析して
目の当たりにして
違うんだけどな…なんて思ってしまう。
迷惑をかけないように黙ってるんだとしても
そんな気は使わないで欲しい。
(それに……。)
チラリと盗み見た焦凍の顔色は
いつにも増して白い。
診るまでもない
あまり眠れてないんだろう
こんなんじゃ
その内青くなっちゃう
そしたら、ただでさえ愛想悪いのに
益々近寄りがたくなっちゃうよ。
いい加減クラスに馴染むべきだと思うんだ
こんな風になるくらいなら
迷惑かけられた方が余程マシ。
(よし!)
最期にとっておいたデザートを食べて
焦凍の腕を掴んで立ち上がる
私如きの力では微動だにしない体格差だけど
察した彼は自ら引っ張られてくれた。