第29章 【空色】心温
~Sideハイリ~
体育祭までの2週間は
長い様な短い様な
まさにそんな感じ
焦凍が居ない時間を埋めるかのように
次々に予定を組み込んで
とにかく私は忙しかった。
「今日の午後は何すんだ?」
「ねむりちゃんに個人授業つけてもらう。」
午前は普通科で授業を
午後は個人授業
休日も、下手したら放課後だって潰す勢いだ。
だけど寂しさを紛らわすのには丁度いい
加えて将来の幅も広がる
(かなり偏った将来だけど。)
授業をつけてくれる教師陣と言えば
見慣れたおなじみのメンバーだ
宣言せずともどちらの科を選ぶのか
勘付いてるのは焦凍だけじゃないと思う。
「そんなに焦って決めて良いのか?」
「ん、遅いくらい。」
賑わう大食堂で
一緒に食べるのはいつぶりだろう
あのパニック以来だと
思い出してクスと笑う。
気遣う視線に笑みを返すと
途端にその気遣いは苦々しい物へと色を変えた。
そして
焦凍は惜しげもなく不満のため息をつくのだ。
「俺は反対だ、なりてぇモン決まってねぇんだろ?」
「どうだろ。」
「自分の人生くらい、人の為じゃなく自分の為に使え。」
益々不満を募らせる
鋭い目が私を射抜く
この結論を彼は
まるで贄かのように話すけれど
決してそんな殊勝なものじゃない
A組の皆の強さ、魅力“個性”
間近で、肌で感じて
月並みな表現だけど凄いと思った
それしか、思えなかった。
それはつまり
私と皆の差が甚だしいってこと
大人と子供
いや
天と地といってもまだ足りない位だ。
そんな人たちが自分の所為で悪評を被る?
(絶っっっっ対嫌だ。)
そんな責任負えない
嫌なんだ、私が
欲張りで、ワガママで臆病なだけ
自分のための選択だ。
だけど焦凍はそれを自己犠牲という
もうこれは価値観と見解の違いだ
実はもう一つ
動力源はあるんだけど
そっちの方が
まだ納得してもらえそうな気もするんだけど
それは…言ってない。
細やかな秘密一つ
私だって抱えていいでしょ
ここのとこ、焦凍は秘密が多すぎるしね。