第4章 【桜色】毒占欲 陽性
~Side轟~
実際逃げたいと思われようが訴えられようが
逃がすつもりはねぇ。
それでも聞いたのは、欲しい言葉を期待したからだろう。
指に巻き付けていた髪をスルリと解いて
答えを急かす様に首筋を撫でる。
身を捩らせながら俺へと寄せられた笑顔は
柔らかく優しいものだった。
「大、丈夫。ちょっと苦しかったけど…。」
はにかんだ笑みを浮かべ細く息を吐き出す姿が
未だ混乱している事をありありと告げている。
それなのに俺を落ち着かせようとしているのか、
背中に腕を回し撫で始めた。
(どこまで優しいんだか…。)
充分すぎる程満たされて、初めて気付いた震える肩。
恐怖を与えた罪悪感から目を逸らす様にその細い肩にキスを落とし首筋に沿って舌を這わせると、甘い声が漏れた。
「ひゃっ…んっ。」
「可愛い声出すな、我慢できなくなる。」
我慢する気があったのか
自分で自分を笑っちまう。
叶うなら全部欲しい、
だが……
(こんな震えを見せられたらな。)
優しいハイリの事だ、
求めれば受け入れてくれるのかもしれねぇ。
だがそれは俺が嫌だ。
受け入れて貰えて満たされたお陰か
ようやく俺は、理性と言うものを取り戻した。
「とりあえず今日はこれで我慢する。」
最期に首に吸い付き所有物の印を刻む。
赤く刻まれたそれをもう一度食んで、やっとハイリを解放した。