第4章 【桜色】毒占欲 陽性
~Side轟~
「ハイリ……」
俺の呼び掛けに振り返りかけた顎を掴み
性急に唇を奪う。
悲鳴をあげるかの様に跳ねた肩にもう片方の手を回し
強引にこっちを向かせると、固い音と共に上げられていた柔らかい髪が手に触れた。
食むだけで蕩けちまいそうな唇はとても甘い。
(コイツ、砂糖かなんかで出来てんのか?)
柔らかな髪に指を埋めてさらに奥まで求めると
呻く声と共に両手で胸を押され唇が離れた。
「っはぁっ、苦しっ…。」
叩かれるくらいは覚悟していたつもりだが
どうやらそれどころじゃないらしい。
俺の胸に手を当てたまま肩で息をするハイリは
明らかに動揺して見える。
だが、それでも逃げはしない。
それだけで安堵できた。
二人で佇むには少し手狭な玄関を照らすのは
明り取りの窓から入る人工的な淡い光のみだ。
薄明りに浮かび上がるハイリを構成するパーツは
どこを見ても扇情的に見えた。
涙を溜めた瞳
赤く染まった頬
上下する細い肩
見ているだけで煽られる。
「なぁ、逃げねぇのか?」
耳に下唇を触れさせたまま尋ねれば
そこから伝わる熱が上がっていくのがわかる。
緩くウエーブのかかった亜麻色の髪を指先に絡めながら
ハイリの次の言葉を待った。