第28章 【空色】プラシーボ効果
~Side轟~
隠そうとはしてんだろうが
駄々漏れの「寂しい」が全く隠せてねぇんで
可笑しくて、可愛くてしょうがなかった。
「ねぇ、毎日一緒に帰れたりする?」
「ああ、そのつもりだ。」
「あと、ちゃんとLINE返してね?」
「わかってる。」
「スタンプも絵文字もなきゃ嫌。」
「……努力する。」
「絶対に!」
「わかった。」
小指を結ぶ代わりに額を触れ合わせ
暫くこんな時間もお預けだと
蕩けていくハイリの笑顔に胸が詰まる。
約束を包む香りは俺のものか、ハイリのものか。
同じシャンプーを使ってんだから
当然同じモン
だってのにやはりハイリの香りに違いねぇんだから面白い。
次、ハイリに会う頃には
俺はこの香りではなくなってんだろうと
詰まった胸に棘が食い込んでいく
闇に塗れた部屋の中
カーテンの隙間から差し込んだ光が
閉じられたクローゼットを指し示すように当てられていた。
制服のポケットに入れたままの写真をどうすべきか
ハイリに決して見せられねぇそれは
今の俺の心内そのものだ。
もし全て話してしまえたら
どれだけ楽だろうか
ハイリはどんな顔をするだろうか。
きっと俺が楽になった分
ハイリの抱えるモンが増すだけだろう
それでも
笑って許してくれるんだろう
だからこそ、言えねぇんだ。