第28章 【空色】プラシーボ効果
~Side轟~
「焦凍と居たら
ヒーロー科に偏っちゃいそうだから
丁度良かったんじゃないかなって思う。」
「俺は、ヒーロー科を選べなんて言わねぇぞ?」
「わかってるよ。」
察してよ、そう言って笑うハイリは
どこか寂し気で
それでいて悲し気で
何かを諦めた様に見えた
表情を隠そうと
胸に再び埋まった顔には今
どんな感情が宿っているのか
自分は言わねぇで
問う事なんざ出来る訳がねぇ。
「事情は話せねぇが
体育祭で一先ずケリ付ける。」
だからってそれで帰るって約束は出来ねぇ
そもそも親父の意図がまだ読めてねぇ
わからねぇ間はハイリの側に居るべきじゃねぇんだ。
そんな思いが
一先ずなんて曖昧な言葉を生み出した。
ただでさえ約束に敏感な奴だ。
もし守れなかった時
余計悲しませるだけだろ。
約束は間違いなく
罪悪感を拭うためのモン
付け足しの罪滅ぼしに過ぎねぇ
「だから終わったらどっかいくか。」
「ホント!?」
「ああ。」
浮足立ったハイリの声は
ニセモンだった。
一つ違いを見つけると
次々に違和感が見えて来る
いつもよりリアクションが大きいが
表情は変化しねぇ
口数は多いが
声に抑揚がねぇ
どんどん増えてく控えめな約束に
ワガママを言っているフリなのだと
理解が予想を肯定した。