第28章 【空色】プラシーボ効果
~Side轟~
予想は出来ていた。
クソ親父がコソコソハイリの事を調べる。
アイツならやり兼ねねぇと
予想が確証に変わっただけ
だからって、放置する気は毛頭ねぇ
事を荒立てられねぇとなると
選択肢は限られてくる
(…―――とりあえずは、体育祭か。)
親父がハイリに直接干渉してくる前に
はっきりと示すべきだろう。
泡沫の回想
一人耽った時間はどれほどか
――パチンッ
突然鳴った音に
泡は弾けて消え去った。
「どした?
怖い顔してるよ?」
いつの間に振り返ったのか
掴まえていた筈の手も解かれ
今や目の前へ
小首を傾げて覗きこむのは亜麻色の瞳
「―――いや、悪ィ。」
「んーん、そんなに思い耽る程気になるなら
緑谷くんに尋ねてみたらいいんじゃない?」
「緑谷?」
「そりゃま、教えてくれるとは限らないけど
モヤモヤするならその方がスッキリするかも。」
一瞬何言ってんのか理解できなかった
そういや、その話から始まったんだと思い出し
一人納得する。
どうやらハイリは俺が思い耽っていた理由が
そこにあると思っているらしい。
(当たらずしも遠からずか…。)
昼休み、大食堂で飯田と麗日の会話を聞いた。
『デクくん、何だろうね。』
『オールマイトが襲われた際、一人飛び出したと聞いたぞ。
その関係じゃないか?
蛙吹くんが言ってたように、超絶パワーも似ているし
オールマイトに気に入られてるのかもな。』
さすがだ、と
言葉を添える飯田に
麗日が合点がいったとジェスチャーを返す
いつも行動を共にしている緑谷が
その場に居なかった事も含めて推察するに
オールマイトに呼び出されたか何かだろう。
(そうか――緑谷だ。)
オールマイトが何故アイツに目ぇかけてんのか
理由は知らねぇがそれが事実なら
俺は緑谷には勝たなきゃならねぇ。
左を使わずにお母さんの力だけで
クソ親父を完全否定する為に――
「そうだな、そうする。」
――まずは、体育祭だ。