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【ヒロアカ】UAシンドローム【轟焦凍R18】

第28章 【空色】プラシーボ効果


~Sideハイリ~


「ハイリ…。」

「ぅん?」


どこか甘えた声に振り向くことは叶わない
肩に乗った頭がそうさせてくれない。

代わりにその頭を指先で撫でると
手を取られ、掌にキスをくれた。

お湯が跳ねて
波紋が輪を広げていく

小さな波音が
静けさを引き立てている様だった。


「お前、緑谷のことどう思う?」


水蒸気の中に
浮かび上がった問いは
頭のどこにも答えのないものだ


(なぜ、突然緑谷くん?)


この一見突拍子のない問いに
どんな意味があるのかわからない。

掌に触れていた唇が手首へと滑っていく
親指の付け根に歯をたてるこの行為に
どんな感情が込められているののだろうか。


(何故だろう…)


尋ね返してはいけない

問わず
受けた質問に答えるだけに留めるべきだ

そんな気がした。


「緑谷くん、ね
そうだな…不思議な人だよね。
“個性”といい、存在感といい。」


緑谷出久くん 

“個性”は増強型だと思われるけれど
詳細は不明

私からしてみたら
クラス一の患者さんだ。

彼は“個性”を使いこなせていないが故
怪我が多い
というか使う度に怪我してる。

自己犠牲の上に成り立つ力というには
あまりにリスクの高い“個性”だ。

実技で言うならば
あまりいい成績とは思えない

だけどなんでだろう?

彼はどうしても
目を引く時がある。

目立つようなところはあまりない
初めて見た時は
ヒーロー科の生徒らしくないとすら思ったのに


焦凍も
そう感じたのだろうか。

はっきり言って
この人がクラスメイトに自ら関心を抱いた
それ自体が意外でならなかった。


「“個性”…か
アイツの“個性”オールマイトと似てると思わねぇか?」

「そだね、怪我さえしなければ
…似てるんじゃないかな。」


一言づつ交わすと
浴室には、また沈黙が落ちた。
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