第27章 【空色】自性感情症
~Sideハイリ~
イってしまったのか
そうでないのかもうわからない
それくらい酩酊していた。
一度捨ててしまった羞恥心が
諸々の箍を外し
決壊したダムの様に何かが溢れだす
骨抜きにされた身体にあるのは
心地良い倦怠感だけ
(ああ、イってしまったんだ。)
遅れて理解しながら
呻きにも似た声を上げる
甘え、求める為だけに作られたような声は
産まれたばかりの子猫の様。
「んぅ…ン…。」
食べられるようなキスとは言うけれど
実際食べられる訳じゃない
いっそ食べてくれたらいいのにな
なんて思う私は
おかしくなってしまったのかもしれない。
薄ら開いた視界で
視線が交わった。
何色って言ったら良いんだろうな…
一言で言い表せない極彩色に
目がくらんだ。
(焦凍、目を開けてたんだ。)
そこにはもう
恥じらいなんてモノはなくて
嬉しいとさえ思ってしまう。
律動に世界は揺れる
しがみ付いては自分の中の焦凍が
大きくなっていく
果てたばかりで敏感な分
伝わる快感は二乗三乗に累加されて
震える指先から意識が遠のいていく
と
深い息を合図に
世界の動きがピタリ、停止した。
「しょーと?」
唇は触れたまま
繋がったまま
見つめ合ったまま
放り込まれたのは
メレンゲ菓子の様な言葉で
ころり
口の中へと入ってくるようだった。
「はァ…なぁ、中に出していいか?」
シワリジワリと溶けていく
シロップに浸されたメレンゲクッキー
小さくパチパチと弾けながら
喉の奥へと滑り落ちていく
「ん…だして…」
間なんて必要ない
だって
噛み砕く必要なんてないんだもん
フワフワのメレンゲに戻ってしまったんだから
間髪入れずに返すのは
ちょっと変かな?
だけどいつも聞かないのに
今日はどうしたんだろう?
それくらいは
頭に隅っこで考えてた。