第27章 【空色】自性感情症
~Side轟~
今更だと
思われただろうか
初めての時は余裕の無さからだった
次に抱いた時は欲のまま、感情のままに
いっそ孕ませてやるとさえ思っていた。
身も心も未来さえも
手に入れたいと
そんな利己的な考えから
導き出された結論は
日に日に俺を蝕んで
沈黙という名のカーテンに身を忍ばせる
今日までに
ハイリが俺の行為を諫めた事は
一度もない。
いつの間にやらそれが当たり前かのように
問わずやめず
そんなハイリに甘んじて来たが…
先日知ったハイリの本心
コイツの中に“将来”はねぇ
――ならば何故受け入れるのか…
(そう思いながら要求する俺も俺だ…。)
責任は取る
その意志はある
同時に非現実すぎると言う事もわかってる
ハイリは節度を重んじる女だ
駄目ならとっくに
そう言ってるだろう。
この矛盾と疑問を抱えながら
艶麗な身体を貪ってる俺は
やはり
エゴの固まりに過ぎねぇのか…
「ゃ…ぁっ…ぁ、ぁあっ、ぁはっ…」
甘える猫の様な啼き声は
笑い声すら交え湿度の中へと溶けていく
ハイリの腰に指を埋め
抱えながらの交わりに
亜麻色の瞳が恍惚に笑んだ
頬を撫でる指がいつものように頬から目尻へ
慈しむようにそっと滑る
一つ間をおいて
震える唇が甘やかな言葉を紡いだ。
「だい、じょーぶ…」
心中を読まれたかのような言葉は
いつも俺を正当化してばかりだ
肯定して
擁護する
そして今夜もまた
俺はハイリに甘えて欲を優先させんだ
「わり…っ」
限界に押し出された言葉は掠れていて
足そうと思っていた一言をもみ消した
達する度に堕ちていく
いつからそう思うようになっただろうか
脱力する身体と壁でハイリを挟み
深い呼吸を繰り返していると
身じろぎ一つせず手だけが背を撫でる
ぽんぽんと
あやす様に
慰めるように
(敵わねぇ…)
今日はどこまで読まれちまったのか
こんな淫らな光景にそぐわない笑みは
懐かしささえ感じる、穏やかなものだった。