第27章 【空色】自性感情症
~Side轟~
左の膝にを抱え上げ
抱いていた腰を掴み寄せる
力が込められたハイリの両手は
爪を立てながら俺の首へと深く絡められた
いつもしっとりと吸い付いてくる肌が
今日は水気のせいでよく滑る
抱えた太腿に僅かに爪を立て
欲のまま引き寄せると
ハイリはだらりと片手を落とし
首も背も仰け反らせた
「ひぁ…っ…ぁっ」
まぐわいの中で最も高まる瞬間
果てる時よりも満たされる
深く繋がれば繋がる程に
身体よりも心が
チラリと顔を覗かせるのは
満足からくる心の余裕だ
ふと目に入った傷に
口角がツイ…と上がる
弓のようにしなった細い首が
他の部位と比べて白く見えたのは
きっとこの傷のせいだろう
舌を這わせながら口を開いた
「っまだ…痛むか?」
今日の昼につけた俺の歯型
怒りのままに食い込ませた牙は
ハイリの皮膚を破りそこを真紅に染めた。
今や朱殷に色を変えているが
ビクリと跳ねた肩からして
まだ痛むんだろう。
「大…丈夫、だか、らぁっ…。」
「わりっ…。」
途切れ途切れの声が
「今はそんな事どうでも良い」と訴えかけてくる
慣れねぇ体勢でストロークはいつもより緩慢だ
寄せられる切なげな瞳がもっとと求めて来る
一度落ちた手が再び絡められ
まるでもう一度とでもいうように傷の残る首が差し出された。
(わかってやがる…)
打ち付けるというより
こすり合わせるような交わりは
酸素の薄い浴室では致命的だ
緩やかな分時間がかかる
まともに回らねぇ頭で求めるのはハイリだけ
(まともに回ってても変わらねぇか)
そんな自分に笑いながら
朱殷を避けて舌を這わせた。