第27章 【空色】自性感情症
~Side轟~
熱い雨の中
前髪を伝い落ちた雫が
細い鎖骨のくぼみへと転がり落ちた
既に水が溜まっているそこは
決壊したダムのように
小さな泉を溢れさせる
逃げ道を見つけた水は
待っていたかのように
一筋の道を辿って谷間を下って行った
反応は予想以上
ベッドの中で晒す肌と何が違うのか
毎夜のように重ねるまぐわいは平気なのに
何故風呂は駄目なのか
常々感じていた疑問だったが
本当に駄目だったのか。
腕の中で硬直しきったハイリを見て
喉がクツと鳴った。
(今更だろ…。)
湯に晒された肌に紅が指す
ハイリを逆上せ上げているのは
この熱い湯か
それとも――…
わかりきった問いだ
固く握りしめられた手を取り
解きあげて指を食む
ピクリと跳ねた身体が
上擦った声を押し出した
勿論、問いの返事なはずがねぇ。
「あ、の…濡れちゃうよ?」
「風呂場でそれは愚問だ。」
何を当たり前なことを
笑いを耐えるのにも苦労する
この言葉がどれだけ恥じらってるのかを
明瞭にする。
わかっていて
こういう反応をさせているのは俺で
それを愉しんでいる
同時に
安堵している
ハイリは間違いなく俺のモノなんだと。
確認したくなった理由は一つじゃねぇ
確認する為だけの行為じゃねぇ
俺はハイリを渇望して止まねぇんだ。
紅味を増していく首筋に触れる唇は
恐らく二日月にも満たねぇだろう
ハイリの頭が混乱していて良かった
今俺の胸ン中を覗かれちまったらたまったもんじゃねぇと
溜め息にも似た吐息を零した。