第27章 【空色】自性感情症
~Sideハイリ~
排水溝に流れていくこの湯のように
私の言葉も飲み込むべきなんだろうか?
熱めのシャワーを頭から浴びながら思う。
(家に帰った理由は聞かないとしても
どっちか決めるって事は伝えたいな。)
てっきり怒って帰っちゃったのかと思ってたけど
爆豪くんも違うって言ってたし
事実怒ってないようだし
それくらいは言っても良いだろう
(ちゃんと話そう
まだちゃんと顔も合わせてないしね。)
うん、と一人頷き自己解決。
結局昼休みの話題を引っ張り出す事になるけれど
顔を見て話せば大丈夫!
と両手を胸の前で握りしめる。
チラリと見たバスタブの中
水面を上げていく湯は乳白色だ
ここまで準備すると言う事は
絶対浸かれと言っているんだろう。
あれで結構世話焼き、というか心配性なんだ。
(それともこの後
焦凍も入っちゃうのかな?)
私はシャワーで済ます事が多いけど
彼はお湯に浸かる方が好きみたいだし
何から何まで和風を好む彼の事だ
それもそうだろう
(でも、そしたらお話するのは結構後になるな…。)
お風呂から上がったら
少し時間を貰えないか聞いてみよう。
後ろでカチャリと音がするまで
呑気にそんなことを考えていた。
「………え?」
声は普通に出て来てた
だけど浴室内に響く
二つの水音にかき消されたのだと思う。
スルリと腕が巻き付いてきて
ヒタと肌が背に触れた
耳の裏に当たる体温はいつもより熱く
背から伝わる鼓動が
自分の鼓動を速めてく
(え…え……?)
次、顔合わせたら
何、話すんだったっけ?
確か…確か……
なんだっけ
なんだったっけ?
何が起こったのか
急速回転する頭は
回りすぎてまだ何も答えを出せてないのに
声が直接鼓膜を震わせて
私の脳に現実を突きつけて来る。
「で? なんでこんなに遅くなったんだ?」
責めるような言葉とは対照的な甘い声に
どくり、心臓が跳ねた。