第26章 【空色】躁と鬱
~Side爆豪~
馬鹿な女だが嘘ついてるようには見えねぇし
ここまでタチの悪ィ冗談言う奴じゃねぇ
だが易々と信じられねぇ
それだけの関係を
俺はもう目の当たりにしちまってんだ
第一、ンな事轟が認める訳がねぇだろうが。
「半分野郎に言ったのかよ。」
声は上ずらねぇように
その分ドスの利いたモン
目は泳がねぇように
その分座ってたはずだ
だがハイリは眉を下げて笑う。
「あー…まだ…です。」
「じゃ、やめとけ。
昼間ひでぇ目にあったばっかだろうが、アホかお前。」
「ちゃんと話すつもり!
だけどなんか、ちょっとタイミング悪くて。」
話せてねぇって事は
やっぱなんかあったんだろうが。
誤魔化した事絶対忘れてんぞコイツ。
アホなんか、バカなんか
(どっちもか…。)
ただ、どちらに転がろうが
例えタイミングだけの問題だろうが
先に打ち明けたのは俺だった
それを喜んでいる俺が居んのは
確かだった。
俺もコイツも救いようのねぇバカだ。
「大体さ、隠せる事じゃないでしょ?
ちゃんと言う!」
「てめ…冗談じゃ済まねぇぞ
選択によっちゃ反対の声も上がんだろうが…。」
なんで辞めさせようとしてんのか
決定的になんのが怖えか
既に笑えねぇくらいソレだろーが
俺が反対の姿勢を見せれば見せる程
ハイリはムキになって突っかかって来る。
「わかってるっ!」
「わかってんなら
先に半分野郎と話付けてから言えや…。」
「はいッ!」
前に乗り出していた身体を跳ねさせ姿勢を正すハイリは
「マテ」と言われた犬みてぇ。
見る度気が抜けちまうが
やってる方は真剣。
そういや今日のハイリはどこか低姿勢だと
拾う情報を都合よく解釈しそうになる
(早合点すんな
どう考えたっておかしいだろうが…ッ)
ぜってぇ裏がある
言い聞かせ続ける頭は限界だった。
反らした顔
横目で様子を見てみりゃ
またぴょこっと肩を跳ねさせながら背を伸ばす
その「マテ」を見る度に笑いそうになっちまう
痒くもねぇ鼻を掻きながら
隠した口元の笑みは
期待してるからじゃねぇ
犬みてぇなハイリが可笑しくてしょうがなかったからだ。