第26章 【空色】躁と鬱
~Side爆豪~
「っっ違うよ?」
違うと言いながら
たった今落としそうになったコーラを
テーブルの上に置く。
ふぅとつかれた息が
それが嘘だと言う事をありありと物語っていた。
嘘つくならもっと上手に付けってんだ
第一今更俺に気ィ使う必要がどこにあんだ
ねぇだろがッ今更だろうがッ。
気の遣い所が根本的に間違ってんだ
この女はッ!
声に出さなきゃ届きゃしねぇ
下手したら出しても届きゃしねぇ
何も知らずにハイリはにへらと笑う。
「そじゃなくて、心操くん…あ、昼休みの人ね
上手く話せなかったの
せっかく庇ってくれたのにごめんっ!」
パンと両手を合わせ大きな目をギュッと瞑る
勢い良く下げた頭と同時に出た「ごめん」は
チラリと窺う開いた片目に相殺された。
ガキかコイツは…
「だろーな。
あの男、放課後A組まで宣戦布告しに来やがった。」
「ええ!?」
「……るせェ、足元ごっそり掬ってくれるんだと。」
頭と口がてんでバラバラに動く
大概器用だと
自分でも笑えてくる。
(許可なく話を挿げ替えやがって…。)
ソワソワして見えんのは
俺の言った一言の意味が気になってしょうがねぇからだろーが
やり場のない鬱憤を当てつけられたストローが
スコンと音を立ててカップの蓋に刺ささる。
その隣に置かれたフルーリーのカップは
汗をかき始めていた。
まるで今のハイリみてぇだ
じわじわとその大きさを増し
零れていく。
「ごめん、なんかたぶん、私の所為…もある。
いや、ちょっとかなり私のせいかもしんない。」
「ンだそりゃ
どっちかはっきりしろや…。」
「私の所為ですスミマセン。」
実際のとこコイツの頭ン中で誰が回ってんのか
そン中に自分は居んのか
窓の外の車を目で追いながら考えちまう。
なんだかね、と付け加えて始まったそのあらましは
殆ど入って来なかった。