第26章 【空色】躁と鬱
~Sideハイリ~
『放課後マックを爆豪くんと』
まるで何かのタイトルみたいだ。
「なんで俺がてめェの暇つぶしに
付き合わなきゃなんねェんだ。」
「ごもっともです。
お怒りをお沈めください…。」
「ぁあ?」
なぜ爆豪くんを選んでしまったのか
お詫びのフルーリーを差し出しながら
頭を下げる。
ホント全くね
ごめんなさい
心の中では土下座の勢いだ。
今の悩みを相談するに当たって
この人だけは選んじゃいけなかっただろうに…。
(とりあえず、焦凍の件は避けよう。)
なんたって爆豪くんと焦凍のツーショットを見てしまったばかりだ。
なんだかんだと優しい人だから忘れがちだけど
爆豪くんって、焦凍のコト好きなんだよね。
(しかもかなり絵になってたから…実は焦った。)
再認識した光景は衝撃的だった。
でも、私は彼に借りがある
ここは目を瞑ろうと
言葉通り視界に蓋をして立ち去ったのが昼休み。
そんな彼に焦凍の相談をするのは
無神経と言うものだ。
幸か不幸か、悩みはもう一つあるわけだし
(うん、嘘ではない、いける。)
緊張してるのか目一杯吸った息。
第一声は
ドンと机に肘を置く音に取られてしまった。
「半分野郎に何を言われたか知らねぇが
それはお前のせいじゃねぇ。」
頬杖の上に興味無さそうな顔を乗せ
窓の外を見ながら
指まで食い付きそうな勢いで
ハンバーガーにかぶりつく爆豪くん。
うっかり
持っていたコーラを落としそうになってしまった。
飲んでなくて良かった
飲んでたらきっと怒鳴られていただろう。
「な…んで?」
「そうでもなきゃ、てめェがンな面するかよ。」
つまらなそうに寄せられたのは瞳だけ
顔の向きはそのままにハンバーガーをもう一口
掌で覆われた頬はハムスターの様なのによく話せるな
なんて器用な人だ。
だけどそれ以上に凄いのは…
(爆豪くんって読心術の心得でもあるんだろうか?)
胸中の悩みは
結構上手に隠しているハズだったのに
サラッと当てられてしまった。
誰かが言ってた「才能マン」ってのは
あながち間違ってないと思う。