第26章 【空色】躁と鬱
「はーーーー…」
吐き出した息は3人同時、盛大に。
砂利の混ざった土の上に座り込み
後ろに両手をついて青い天井を仰ぐ。
まさかハイリの中で
爆豪がそんな存在になるとは思っていなかった。
確かに爆豪と話す時のハイリは
肩の力を抜いているとうか
気を許している様に見える。
言い方はアレだが可愛げが無いのだ。
男女の壁を越えた友情でも抱いているのだろうか
なんせ勘違いしたままのハイリだ。
しかもその会話の直後、あんな二人を見てしまえば
もう自分たちだってフォローの仕様が無い。
掴んだ階段の手すりの向こう側
人気のない通路で
轟に足ドンする爆豪の姿
あれを遠目に見て顔を赤にしたり青にしたり
瞳を白にしたり黒にしたり
最終的には俯いてしまったあの亜麻色の頭の中は
きっと多大な勘違いに塗れていたのだろう。
特にコメントも無く「教室に帰る」と言う姿に
爆豪に対する友情を余計感じ取ってしまった。
「迫られているように見えたんだろうな。」
「違ぇんだけどな……。」
「ある意味迫ってたんだと思うぜ?」
フォローにもなってない上鳴の台詞は
初夏に似つかわしくない
冷たい風と共に流れていく。
もう取り戻せない程開いた差
差と言うべきかもわからない
いくら轟が爆豪を恋敵と認めても
肝心のハイリが対象外なのだ。
こうなっては
もう、ベクトルが違う。
下手したらクラスで最も
そういう対象から遠い所にいるんじゃないだろうか。
――もっと早く言ってやるべきだった。
だからこそだ
切島は思う。
「言うべきだろ、少なくとも爆豪にはよ。」
その表情にいつもの笑顔はない。
冗談じゃない
茶化す様な状況じゃない
珍しく真剣な顔をして
「うし」と気合を入れた切島はもう止まらないのだろう。
「言うぞ、爆豪には。」
念を押すように断言する漢気溢れるクラスメイト。
一人立ち上がる切島を見上げ
二人は「いつ言うのか?」と視線に問いを乗せた。
体育祭前の最も士気の上がるこの時期だ
あまりタイミングとしてはよろしくない。
数分の話し合いの結果
体育祭後に説明する…
そこで話は纏まった。