第4章 【桜色】毒占欲 陽性
~Sideハイリ~
とはいえ……
(買い物って言ってもスーパーなんだけどね…。)
どうせならどこかのカフェでお茶でもしたい気分。
だけど買い物しなきゃご飯作れないし
途端に生活感満載な自分に笑いが出る。
ドアを開けると、ちょうど同じ階の住人らしき人に声を掛けられた。
「あれ? お隣さん越して来たんだ?」
お隣さんと言うからには隣人なのだろう。
ちょっと軽い見た目の年上らしき男性だった。
そして同時に思い出す
何がって、バタバタして挨拶していなかった事をだ。
「ご挨拶もせずにすみません。
昨日越してきました、楠梨と申します。」
「年下だよね? 大学…高校生?
高校ドコ? 下の名前は?」
若干気まずかったケド、良かった気にしてないみたい。
ぺこりと下げた頭を上げると気にしてないどころか
私の挨拶自体スルーされた様に見える。
「ね、どっか行かね?
俺、今から一人飯行くとこだったんだよね。」
そう言って私の肩に手を乗せる辺り
軽いのは見た目だけではないみたい。
今日会った上鳴くんも「軽いな」って思ったけどそんな比じゃない。
ごめんなさい上鳴くん。
今度会ったら謝らないと……。
未だ名乗らない隣人さんはとにかく一方的に話しを進める人のようだった。
「すみません、買い物に行こうと思ってるので
遠慮しておきます。」
「あ、俺も買い物行こうと思ってたんだよな
一緒行こうぜ! 案内するし!」
ご飯はどうする気なんだろうか……?
あまり自炊できるタイプに見えないけれど。
先程からの不躾な質問の嵐に印象は最悪。
無遠慮なボディタッチに気分も最悪だ。
無論、こんな人について行くわけがない。
「すみません。
やっぱ買い物辞めることにします。
まだ片付けが終わってないので。」
そう言って鍵を取りだし背を向ける。
この人は何言っても無駄だ、逃げても追いかけてきそうだし
一度隠れた方がいい。
昔父に教えられた教訓を私は素直に実行しようとしていた。
だけどまさかそんな父を恨む結果になろうとは…