第4章 【桜色】毒占欲 陽性
~Sideハイリ~
片付けが残っていたのは本当だ。
いくら手伝ってもらったとは言え、引っ越し初日に片づけ終わる程私は器用じゃない。
「部屋は終わったし、キッチンかな……。」
口に出しても誰も反応する訳がない。
一人暮らしって独り言増えるんだな
なんて思いながら一人でクスと笑う。
白を基調としたフレンチシックな部屋は、一人暮らしが決まってから自分好みに仕上げようと1から買い揃えたものばかり。
ソファーにベッド、テーブルやカーテンからラグに至るまで全部。
この日を楽しみにしてたんだ。
昨日はまるで一人になれなかった。
だから今日から楽しみにしてた1人暮らしが始まるんだ。
なのに……
「寂しいな……。」
キッチン用品を片付ける手が止まる。
別に、ホームシックじゃない。
わかってるんだ
もう少し一緒に居たかった。
誰でもいいわけじゃない
彼と一緒に居たいんだ。
一緒に居たら、距離を取ろうとする癖に私は我がままだ。
マイナス思考に続いて我がままな自分まで見つけてしまった。
恋とは案外苦いものだ。
(ダメだ、このままじゃ滅入ってしまう。)
少しでも気を紛らわしたくて
買い物に出かけようとバッグを手に取り玄関へ向かう。
置かれたばかりの全身鏡に映る自分の姿に
「ハハ」と笑いが漏れた。
「うわ、着替えてなかったわぁ……。」
帰ってからもう2時間は経つ。
未だ着替えてない事に気付かなかったなんて重症だ。
「よっし! 少しおしゃれして出よう!」
もやもやする時はこれに限る、
一目惚れしたクローゼットを開けて
春カラーのワンピースに腕を通した。