第25章 ♦番外編♦ ましゅまろホリック
口づけ…と言うよりは
食べられている。
そんな感覚がハイリの体温をかろうじて保っていた。
振り切れそうなメーターはギリギリ正常値
少しでも針が振れればヒートゾーンだ。
下唇を唇で挟まれては引かれ
それを繰り返す。
思えばさっきからキスをされているというより
何か感触を確かめられているかのよう。
何か閃きそうだ
その思考回路は峰田の声にぷつり遮られた。
「人前で堂々とイチャついてんじゃねぇぇぇっ!」
血の涙を流すクラスメイト
そうだった
今日このパーティをする事になったきっかけは、彼、峰田なのだ。
慌てて身を引き目の前の胸を押し返す。
苦情は出せなかった。
見上げたその表情には
頬の時とは比べ物にならない程の不機嫌が見て取れたからだ。
(怒…ってる……。)
キレたというよりは拗ねている
野次を入れる峰田に便乗する者
それをまぁまぁと抑えようとする者
きゃぁきゃぁと囃す者
それぞれにこの表情がどう映っているのかは知らないが
ハイリの目にはムッと眉を寄せたしかめっ面にしか見えない。
この二人は先に怒った者の勝ちなのか
こうなってくると
おたおたしてしまうのはハイリの方だ。
「焦凍、あの、ごめんね?
わざとじゃなくて、いや、わざとなんだけど…。」
途端に言い訳で宥めようとする。
兎にも角にも収めて欲しかったのだ
何かはわからないが、その欲求を。
だが意味はない。
少女は一つ忘れている。
奇しくも自分で思ったばかりだったその言葉
轟は“解決するまで食べ続ける”のだという事実を……。