第25章 ♦番外編♦ ましゅまろホリック
(流石ハイリだ…。)
唯一自分の胸中を察してくれた目の前の彼女に
轟は感心していた。
悩みと言うよりわからない
どうしても思い出せないのだ。
困り果てて頼ろうとするなど子供の様だ
そう思いながら傍へ寄ってはみたが
やはり理解してくれている。
小さく首を傾げて自分を伺い見るハイリは
3月だというのにブレザーを脱ぎ
タイを外し、シャツの袖まで捲り上げている。
チョコレートで汚さないようにだろう
よく見れば他の女子も
似たような格好だ。
幾許か幼さも感じるが
精神年齢はやはりハイリの方が上。
自然と和らぐ目元は条件反射と言って良い
柔らかな髪を耳にかけてやり
親指で白い頬を撫でる
この行動全て、無意識に近い。
と、その時
探しあぐねていた答えの欠片が
頭の片隅にころり、転がり落ちて来た。
「焦凍?」
ハイリはハイリで困っていた。
極々自然な動作で触れて来る
これはもういつもの事だ。
だがその顔は笑っていても
どうやらまだ悩みは解決していないらしい
困ったように笑うとも少し違う
心がどこかお留守なのだ。
自分の目を見ているようで見ていない
そんな勘はさほど間違っていなかった。
ぼーっと見つめられる事数十秒
普段なら恥ずかしさからたじたじになるハイリだが、今日は違う
あまり見ないその表情にこちらも顔に穴が開く程見返してしまう。
傍から見れば
人目も気にせずただ見つめ合っているバカップル
自ずと全員の視線を集めていた。