第25章 ♦番外編♦ ましゅまろホリック
「む、無理せんでええよ!?」
「気にすんな! 俺らが食うし!」
「そうですわ! フルーツをどうぞ!」
全く見当はずれな所で
気遣うヒーローのひよこたち
とうの本人の耳に
それらの気遣いは全く入っていない。
故に否定もしなければ肯定もしない
ただ二本の指でつまみあげた真っ白なメレンゲ菓子を
再びその薄い唇で食む。
「……………?」
不思議な空間が出来上がっていく
その空間を疑問符が埋めていく
その様を見ているクラスメイトが浮かべるはてなマークは致し方ないだろう。
だが、轟本人も浮かべているのだ。
少し離れたところで
ミックスナッツをスプーンで掬うハイリは
その形容しがたい間を
笑いを堪えながら見守っていた。
(駄目だあれは
ああなったら解決するまで食べ続けるんだろうな。)
それもありだ
彼はちっともお菓子を食べないから
たまには良いだろうとさして気も止めず
さて次は…と持っていたスプーンをピックへと持ち替える。
迷い箸ならぬ迷いピック
行儀が悪いとわかっていても
つい泳いでしまう
(バナナ…いや、ここはマンゴー…
んんんやっぱイチゴ!!)
なんて幸せな悩みだろう
ぷすりと赤色の乙女を刺してふと気づく
手元に薄らと落ちた影
その影と気配に顔を上げて見ると
先程まで輪の中心に埋もれていた彼が真横に立っている。
その表情は変わらぬまま
恐らく疑問は解決してないんだろう
察したハイリは手助けすべく口を開いた。
「何か、悩み事?」
内容がわからないのではこの場で尋ねていいのかもわからない。
声を潜めるのは当然の配慮
自然と顔は轟の耳元へと近づいた。