第25章 ♦番外編♦ ましゅまろホリック
「食べた事ないの!?」
「知らなかったの!?」
「ほら、たんとお食べ!!」
「なんだよおめぇ、やっぱ変わってんな!」
「俺、轟の私生活が想像できねぇ…。」
「食え! 存分に食え!!」
なんだそんなにおかしい事なのか。
何故か知らなかった事に挿げ替えられているが
そんなことにも気づかず
一気に差し出されたマシュマロ串を無視して
抓んだままのそれを口にする。
一同は
初めて卵を食べる赤子を見守るがごとく
固唾を飲んでその様を見ていた。
「ど、どう? 美味し?」
葉隠が問うたが
あまり美味しくはないのだろう
マシュマロは好き嫌いがはっきりと分かれる食べ物だ
轟が好まずとも何ら不思議は無い。
真顔で咀嚼を続ける男を見て
一同がそう結論付ける。
ただ一人
ハイリを除いて。
初めての食べ物を口にして
表情がなんら変わらないなら
好みではない、そう受け取れる。
だがそれが轟なら話は変わって来る。
とにかくこの男は
表情が乏しいのだ。
クラスメイトには無表情に見える様だが
ハイリの目にはちゃんと表情が見える。
(何か考え込んでる…。)
少女の目に轟の姿はそう映っていた。
だがそれ以上はわからない
彼の頭の中は容易に想像がつかない
轟焦凍とは
そういう男なのだ。
案の定
その男は皆の予想を華麗に裏切って
二つ目のマシュマロに手を伸ばした。