第25章 ♦番外編♦ ましゅまろホリック
そもそもお詫びのチョコレート
お返しを貰うなんておかしい話だ
ハイリがそう訴えたのが1週間前
ホワイトデーとはバレンタインのお返しをする日
この日
初めてそう言う日がある事を知った。
「解せない」と言い返すクラスの男子勢。
何故会議にまで発展したのかは理解できないが
クラス会議の結果
「お菓子なら受け取る」
そこで双方譲歩した。
『菓子屋でも開けるんじゃねぇか?』
『その言葉、そっくりそのままお返しします。』
轟の皮肉は倍どころじゃない
二乗、下手したら三乗されて返って来た。
事実
一月前のチョコレートは処分できずじまい。
自分が食べる訳でもハイリが食べる訳でもない
一片も減らぬままクローゼットの中に仕舞ってある。
「捨てる」と言う轟に
「それはあんまりだ」と言うハイリ。
食べる気にもならないが
食えというのかと問えば
そこは頷く訳でもない
堂々巡りの結果だ。
意図せず訪れた沈黙に
ぷいっとハイリが顔を逸らすと
轟が急にオタオタと謝りだす。
『わりぃ。』
この1カ月ずっとこのネタで頭が上がらない。
そして躊躇なく出てくるこの詫びに
ハイリは満面の笑みを浮かべるのだ。
『許す!』
端から全然怒ってないくせに……
クラスメイトが「ご馳走様」と肩をすくめる。
『いつも振り回されている』
いつもそう言って拗ねているハイリは
優位に立った気がして嬉しいのだろう。
ハイリも中々振り回している気もする
そんな愚言はこの際飲み込んでやろう
いつも不思議と見えてしまう犬の尻尾は
今日、残像が見える程に振られている。
幸せそうなハイリの姿を見て
クラスメイトはほのぼのと和んでいた。