第25章 ♦番外編♦ ましゅまろホリック
冷暖房完備
広さも申し分ない
多少汚そうがなんとかなる
加えて後片付けは人任せ
パーティをするには適した場所だが
それにしたって
ここまでする必要があったのか。
中央にそびえる大きなチョコレートファウンテンは
クラスの副委員長
八百万の“個性”で創られたものだ。
彼女の知識を基に作られているだけあって
それはそれは背が高い。
台の上に置いてあることを差し引いても尚高い
チョコレートの滝を見上げながら、轟は大きく首を傾げていた。
(これ、やる意味あんのか?)
そもそも何故こんな事になったのか
話は数時間前に遡る
『ハイリちゃーん、ありがとな。』
『わーい、ありがとうっ!』
ありがとうにありがとうを返すとは
なんとも不可解な会話に首を傾げながら
最愛の彼女をただ目で追う。
クラスの男子生徒から受け取る甘ったるいプレゼント。
中身が菓子だとわかっているからだろう
ハイリはすこぶる機嫌が良い。
打って変わってこっちの胸中は
中々に複雑なもんだ。
だが、不愉快に思えど口は出せない。
何故ならあれは
あのバレンタインのお返しだからだ。
自分の無知のせいで
ハイリはあの日の翌日、男だけに留まらずクラス全員にチョコレートを配って回った。
その結果だ…
(にしたってやった分と返ってきた分の比率が
違うんじゃねぇか…?)
一時間ごとに増えていく可愛らしい包みは
昼休みには小山を作り上げていた。