第24章 【空色】インフェリオリティー コンプレックス
~Sideハイリ~
「“個性”ってヴィランに向いてるとかじゃなくて
どう使うかなんだよ。
少なくともA組の生徒はそこで切磋琢磨してる。」
言い始めて思った
この後言おうとしている言葉に
ああ、自分の事を棚に上げて…と。
心操くんの前のトレーに乗ったお皿はとっくに空になっていた。
私のカレーは残り半分
だけどもう
食べることは無いんだろう。
「こんな“個性”のせいで…なんて思ってたら
きっと、その先に進めないんじゃないかな
他の人を目の敵にするんじゃなくて、自分を見た方が…」
「楠梨」
ギギと音をたてたのは椅子の足
心操くんが立ち上がり僅かに首を反らして
私を見下してくる。
抽象的な言葉が
先延ばしにし続けて来た私の不安に爪を立てた。
「“卑怯なコウモリ”って知ってるか?」
【昔むかし、鳥と獣が争いをしていました。
コウモリは、鳥と獣の戦いの様子を見て
獣の方が勝ちそうな感じがしたので
「私は獣の仲間です。
私には灰色の毛皮とキバがあります」
そう言って獣の味方をしました。
しかし、争いは続き
獣が負けそうになると、今度は鳥の前に現れて、
「私は鳥の仲間です。
あなたたちと同じように翼を持っています。」
そう言って、鳥の味方になりました。
そのうち
鳥と獣は争いをやめ仲直り。
幾度もの寝返りを繰り返し
双方にいい顔をしたコウモリは
仲間はずれにされてしまいました。
その時からコウモリは
暗い洞窟に身を潜めるようになったのです。】