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【ヒロアカ】UAシンドローム【轟焦凍R18】

第24章 【空色】インフェリオリティー コンプレックス 


~Sideハイリ~


静かに眠っていた池底の土が
投石に清水を濁す。



(せっかく、忘れてたのにな。)



極力思い出さないように
考えないようにしていた

期限はとうに過ぎているし
このままなぁなぁで過ごせたらいいのになって

だけどある時フッと思い出しては
急に心が重くなって
逃げるように心の奥底に無理やり隠してしまう。



――ワタシハ、ドウシタイノ?



「お前、どっちのクラスの生徒なんだよ。」



A組へ向けられていたと思っていた目は
今や私だけに向けられている。

何が言いたいんだ。
何を知っているんだこの人は。


「私は…」


どっちなのだろう。

なりたい自分がわからない
あるべき場所を決められない

ここで答えられるなら
こんな中途半端な状態、維持してないよ。

唇が震えるのを隠そうと
ぎゅっと噛みしめると
答えを拒絶したように見えたのだろう
心操くんはそのままテーブルから離れていく。

向かった方向は出口でも返却口でもない
ぐるっと回って私のすぐ後ろまでやってきたのが
気配でわかった。


「演習場E。」


頭頂部に落ちて来たのはどこか聞き覚えのある単語
ヒーロー科、一般入試実技試験で私が向かった会場だ。


「そっか、同じ会場だったんだね…。」

「お前、わざと落ちたんだよな?
何がしてぇのか知らねぇが
舐めてると本物の悪人に絡まれるぞ。」


捨て台詞にしては
あまりに親切な忠告だった。


(色々と…まだまだだ…。
“個性”も神経も使い過ぎた……。)


気配が遠のいたの確認して
襲ってきた眠気に両手を額に押し当てる。

ぼんやりと食べかけのカレーを眺める背景で、
切島くん達がこちらへ駆けてくる

眩んだ視界にぬかるむ私を支えた小さな手は
お茶子ちゃんのものだった。


「きついんやろ?
保健室行こう、な?」

「おお、女子の方が良いよなそりゃ。」

「麗日なら運べるしな。」


次々と増えていく聞き慣れた声は
私の所為でヘイトが集まっているとも知らず
優しい言葉をかけて来る。


(ごめんなさい…。)


言えないんじゃない
言わなかった

そんなこと言うくらいなら
ちゃんと考えて決めろって

あの人なら言うと思ったから。


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