第24章 【空色】インフェリオリティー コンプレックス
~Sideハイリ~
いつも憎まれ口しか叩かない口は
ここでも相変わらずだ。
「てめェに掛かる火の粉は飛び火すんだよ。」
「………ん」
「俺らに迷惑かかんねぇ程度に話済ませてこい。
テメェの話し相手は一人じゃねぇんだ。」
「………ぁ。」
あまりに静かな声で投げられた暗号の様な言葉に
目の前に居るのは確かに爆豪くんなのに
(本当に爆豪くん?)
なんて
変な事を思ってしまった。
(なんかいつもはもっとこう――……)
でも小首を傾げた次の瞬間
「わかったらとっとと行けや
このウスノロマ!」
突然目を吊り上げて怒鳴ってきたから
あ、やっぱり爆豪くんだった
そうそう、それそれ…って
(それにしたってウスノロマって…。)
肩を落としながら
溜め息をつきながら
雑多の中呟いた。
「ありがとう」
暗号みたいな罵倒の意味は
ちゃんと理解できた。
『お前に何かあったらヒーロー科にも迷惑が掛かる
“個性”の事は言わずにちゃんと治療してこい。
お前の患者はあの男だけじゃねぇんだ。』
ホントだな。
目の前の事しか見えなくなってたのかもしれない
止めてくれた焦凍に
庇ってくれた爆豪くんに
感謝だ。
向き直ると
一際目立って見えたのは
心操くんよりも見慣れた3人の顔。
首の後ろに手を当てながら
首を鳴らしている切島くんと
両手を合わせて
私に向かって頭を下げてる上鳴くん
ぐったりと
椅子にもたれ掛かっている瀬呂くん
各々制服を乱し
所々に傷を作って苦笑いしていた。
きっと、
爆豪くんを止めようとしてやられてしまったんだろう。
(後で診なきゃ…。)
3人の様子からして
なかなかの騒ぎだったはずだ。
奇跡的なんかじゃなかったんだ。
通路での騒動が食堂まで及ばなかったのは
こっちも騒がしかったから…。
(参ったな。
お詫びじゃ足りないよね、これ。)
二人だけじゃない
感謝すべき人は他にも居る。
上鳴くんの真似をして両手を合わせ
口パクで「あとで」と伝えると
3人同じタイミングでサムズアップしてくれたものだから
なんだかすごく可笑しくて、笑ってしまった。
もしここまで計算して
爆豪くんが動いていたのなら
彼は間違いなくヒーローだ。