第24章 【空色】インフェリオリティー コンプレックス
~Sideハイリ~
大食堂へと向かいながら交わしたLINE。
文字の比率は、相変わらずだった。
【今日はC組の人とご飯食べるね!】
【却下だ】
【私に訊きたいことがあるらしい】
【何処でも聞けんだろ】
【私の個性についてなんだよね】
【尚更却下だ】
【変な噂になったら厄介だもん】
【無視しとけ】
【大丈夫!慣れてるし!!】
【上手く躱してくる!!】
【焦凍…?】
【しょうとくーーーーん( ;∀;)】
【わかったから
その変な文字やめろ】
思い返せば
だいぶ無理矢理な『わかった』だったと
浮かべたのは薄笑いだった。
突き立てられる言葉は
その全てが正論だ。
「大体、言ってた事と矛盾してんだろ」
珍しく感情的な声は普段よりだいぶ低い。
低いだけじゃない
声と言って良いのかもわからない。
獣が唸っている様なドスの利いた掠れ声
理性はあるんだろう
周りに聞こえないように抑えている分
音の振動が、より鼓膜を震わせた。
焦凍が何に怒っているのかちゃんとわかってる。
それが正しいって事も勿論わかってる。
全部、私を心配するが故だ
それだけ大切に思ってくれてるって事だ。
わかってるのに
「ごめんなさい。」
自分でもわからない。
こればかりはどうしても抑えられないんだよ。
小さい頃から
どうしても、どうしても抑えられないんだよ。
空気がピリピリと亀裂の音をたてる中
ちゃんと言わなきゃと
そろそろと口を開く。
「お願い…大丈夫だから
彼は言いふらすような人じゃない、と思う。」
懇願は
添えた言葉によって相殺された。
一瞬で変わる目の色と籠められた力。
ハッとした時にはもう遅い。
ブレザーの上から爪が食い込んだ瞬間
大きく開いた口から覗く犬歯が
鋭く光った。