• テキストサイズ

【ヒロアカ】UAシンドローム【轟焦凍R18】

第24章 【空色】インフェリオリティー コンプレックス 


~Side轟~


その感情はつい先日植え付けられた種だった。
自分すら知らない日陰でそれが芽吹く音がする。


「お前今、何を言おうとした?」


出入り口横の壁に押し付けて
痛みに歪む目を射抜く。

瞳を潤ませているのは何の為か

言いたいのに言い返せない
理不尽に揺れる亜麻色はただ訴える。

唇に塞き止められた言葉は出て来はせず
白みきった赤は血を出さんばかりに噛み締められていた。


「答えろ。」


聞かなくてもわかってるクセにと
言葉は無くとも伝わってくる。

その通り
言わせてぇだけだ
自分のせんとしたことを自覚させるために

覚悟を決めたようなあの瞳は
何度も見てんだ俺は。


「言って良い事と悪ィ事の区別もつかねぇのかお前は…。」


そんなバカな女じゃねぇ
何かしらの原因がある筈だ。

だが今聞く余裕はねぇ
聞く気もねぇ

“個性”を言ったらその分リスクは増えるんだ
だから教師陣は隠そうとしてんだ。
ンなこと
コイツは嫌って程わかってる筈なんだ


「頼むから、自分を蔑ろにすんのはやめろ。」


声に滲む圧
押し殺す分距離は自ずと近くなる
震える肩が隠しようの無い恐怖を俺に告げた。

俺と同じ感情が
今度はハイリを支配するなんざ皮肉なもんだ。


万が一ハイリが…
考えたくもねぇ。

一瞬過ぎった考えに凍った背筋は
自分の“個性”の比じゃなかった。

ハイリが誰かの為に動くのを
面白くねぇと思いながらも
今まで幾度となく飲み込んできた。

今回だって放っておけねぇんだろ?
そりゃわかってる。

だが
今回ばかりは見過ごせねぇ


「俺にはお前以上に大切なモンなんて
ねぇんだ…。」


逃げようとしてる訳でもねぇ
それでも抑えられずに華奢な両肩を掴む
ビクッと引きつった頬から伝わる痛み。

静かに上げられた睫毛に
俺の両手にはさらに力がこもった。


「焦凍が心配してくれてるって事、ちゃんとわかる。
でもごめん…これは言った方が良いと思う。」


根拠のねぇ大丈夫を並べて
初めて俺の手を解こうと身を捩る。

ハイリがここまで意固地になんのは初めてのことだった。



/ 804ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp