第24章 【空色】インフェリオリティー コンプレックス
~Sideハイリ~
「なんだっけ?」
「洗脳とか何とか。」
「あー言ってたわ。」
尋ねておいて片耳で聞いてる話は
あまり頭に入って来ない
このご時世、こんな会話は当たり前だ。
大小様々な雑音の中であまりに自然に流れてく
それはもう聞き逃しても仕様のないくらいに。
メガネが無いせいか
顔を見て話すことが出来ない
気がかりに散漫していた意識は
サラリと出て来た友人の一言によって戻された。
「てか私、心操にハイリの“個性”訊かれたんだよね。」
「………え"?」
素っ頓狂な声を上げる私に
目の前の友人は私の机に頬付けをつき
「聞いてたんだ」と言いたげな視線を投げつけてくる。
差し出されたお菓子はいつの間に開けたんだろうか
上の空だったことは絶対バレてる。
その状況に何も返せず笑っていると
容赦なく現実が襲ってきた。
「最近ハイリちゃんの事、訊いてくるよねー心操くん。」
「詮索すんなって先生に言われてんのにねぇ。」
お菓子を摘まみ上げながら
両側二人がウンウンと首を振る。
詮索…自然な事だと思う。
事件があろうがなかろうが
メガネがあろうがなかろうが
「A組編入生」という肩書はそれなりに注目を集めるんだ。
このメンバーで、この流れで
恋バナに発展しなかったところを見ると
私は本気で詮索されているんだろう。
「そっか…なんかゴメンね。」
尋ねるも何も
この子たちだって私の“個性”を知らない。
小さく頭を下げた私に
3人は「あんたの所為じゃない」と呆れて笑う。
「だから私らにも絶対口外するな」と言ってくれる。
そんな気遣いが嬉しくて、痛かった。
予鈴が鳴っても
頭の中は引っ越し直後の新居より整理がついてない。
突然普通科に戻された事
あからさまに詮索してくるクラスメイト
1つ目は…
元々ヒーロー科は拒否してたくらいだし願ったりなんだけど、あの人から強制されると、やっぱり警戒しちゃうんだよね。
裏がありそうで…。
もう1つは…
元々注目されてる自覚はあったけど
心操くんのはちょっと別だ。
もう何かしらの執念を感じてしまう。
今日は一段とすごい…。
二つの謎についたため息は
C組の担任の一言にかき消された。