第24章 【空色】インフェリオリティー コンプレックス
~Side轟~
『日頃の鬱憤を晴らしたいなら明日にしろ。』
『怪我人相手にそんな事する程落ちぶれてないってばっ!』
『どうだか、嫌いな兄貴が弱ってんなら
そこを狙っていくのが合理的だと思うが。』
『本っっ当に弱ってるならそうしたかもねっ!』
リカバリーガールの時にも思った
ハイリと雄英教師陣の会話は聞いてて面白ぇ
本物の家族のようだ
フンと逸らした横顔はいつもより数段幼く見えた。
大きく竦めた肩に
大袈裟に振った首
生意気な態度は、甘えている証拠。
可愛げのねぇ口調は、安心している証拠。
一昨日、放課後の教室で
何も出来なかったと咽び泣いた。
重傷を負ったのがこの兄だっただけに
ハイリのダメージは、とりわけデカかったんだろう。
いつも「苦手」だ「怖い」だ言ってるくせに
結局ハイリはこの合理性重視な兄貴が好きで好きでしょうがねぇんだ。
泣いたって誰も責めねぇだろうに
前日の滝落としの様な涙など
初めから無かったかのように振る舞う姿は
見事としか言い様がなかった。
(器用なんだか不器用なんだかわかんねぇ…。)
一つ分かったことは
この兄貴の前ですら泣く気はねぇって事だけだ。
そんな兄妹のやり取りは
とにかくけたたましい。
『今日は駄目、絶対駄目。大体休校でしょ?
何しに行くのよ!』
『お子様にはわからねぇだろうがな
大人にゃ休日出勤ってのがあるんだよ。』
『こんっっなミイラ男が行って
何の役に立つのか逆に聞いてみたいわ!』
『それが結構役に立つんだよ、お前と違ってな。』
『っ……じゃぁせめて診せて!』
『断る。』
流石と言うべきか
ペースもターンもハイリに回ってくることは一切ねぇ。
翻弄され続けるハイリは
一人勝手に追い詰められていき
やがて叫びをその室内にこだまさせた。
『っっかぁぁぁぁっ!
むっかつくなぁぁああっ!!!』
泣きはしねぇが
素であることには間違いねぇんだろう
地団駄踏むハイリなんざ…
初めて見た。