第4章 【桜色】毒占欲 陽性
~Sideハイリ~
ぶつけた相手は随分慌てた様子の男子生徒だった。
申し訳なさそうにこちらを振り返り
何故か謝りながら走り去ってしまう…。
あの緑色の衣装は、コスチュームだろうか…?
と言う事はあの人もヒーロー科だと言うことになるけれど
(なんかこう、地味な人だったな。)
呆気にとられ、走り去った方向をまじまじと見る。
癖っ気のある髪にそばかす、それに低姿勢な所も含めてヒーロー志望としてはちょっと珍しいタイプ。
昨日からヒーロー科って会う人会う人個性的だからちょっと新鮮な感じだ。
それに――…
(パッと見ただけでもかなりの重傷だった。)
きっとヒーロー基礎学だ。
処置済みだったし、リカバリーガールの元へ行った後だろう。
なのに完治してないってことは1回で全快できない程の怪我だってことだ。
「授業でもあんなひどい怪我をするものなんだ……。」
お腹の底からざわざわと何か嫌な物が込み上げてくる。
ゾワゾワと腰から背にかけて粟立って行く。
ぶるっと震えた肩を抑える様に両手でさすると、後ろから頭にコツンと何かが当たった。
振り返って目の前にあったのは
「……轟くん……。」
大好きな人の拳だった。