第4章 【桜色】毒占欲 陽性
~Sideハイリ~
扉を閉めてしまえばC組前の廊下は静かなものだった。
ヒーロー科の方から賑やかな声がここまで聞こえてくる。
自己紹介でもしてるんだろうか、飛び交う男女の声は名前のようだった。
(―――…ん?
私、思った以上にヒーロー科を気にしてるな。)
気がつけばこんな感じだ。
気にしない、関わらないと言いながら常にアンテナを向けている。
これは好きな人のクラスだから…
とかそんなん以前の問題だと思う。
(ヒーロー界で生きる…かぁ。)
小さい頃は当たり前のようになるものだと思ってた。
だけど、
それは誰もがなれるものじゃない。
自分は特別なんだって嬉しかった時期もあった。
なのに
その特別はヒーローとしてのものじゃなかった。
私がヒーロー界に入る理由すら活動のためじゃない。
ならば私は捨て置いて
一人でもヒーローを増やすべきだと思う。
自らの意志で志している人の方がよっぽど資格を取得する権利があると思う。
何度訴えた事だろう…。
だけど大人たちは『そうじゃない』と言い張った。
(だから普通科を選んだんだけどな。)
未だ決まらない自分の進む道。
そんな私にとって普通科は
まだ色んな選択の余地がある、と言う意味で最良の選択だったと思う。
それでも心残りがあるかのように
ヒーロー科を気にしてる自分が
「あーーーーーじれったいっ!!!」
もやもやを振り払うように手をバタバタと振るっていると
その手で誰かを叩いてしまった。
「うわっ! ごめんなさいッ!」
「あ、いえ…こちらこ…そ?」
うん? この会話はおかしい。
ぶつけたのは私だ。
何故謝られたんだろう?