第23章 【空色】自立神経失調症
~Side爆豪~
微かに聞こえていたすすり泣きは
次第に咽び泣きへと変わっていった。
聞くべきじゃねぇ
それはハイリの為か
俺の為か
確かにそう思ったってのに
ドアに背は向けど
足は自分のモンじゃねぇみてぇに言う事を聞かなかった。
「ホントッ…ごめっ…っ。」
「わかってる、俺が触ったら泣きそうだったんだよな。」
詰まらせながらも絞り出された言葉は
呆れ笑う声に言葉尻を飲まれた。
受け取った本人はさも軽く流せど
俺の方には遥かに重く響く。
(今更…ってか。)
理解が決定づける
認めたくねぇ現実を。
「っ…しょ…とっ…」
「ん…。」
「何も、出来なかったの…っ
意識、無くてっ、だからっ…だからねっ」
「わかってる、だから泣いていい。」
「わかってる」と何度も繰り返す
聞いたこともねぇ柔らかな声音は
二人の固い絆を主張しているみてぇだ。
「っふ…っ…くや、しくてっ」
「そうだな、よく我慢した。」
「ぅ…ぁ、焦凍、焦凍っ…っ」
「大丈夫だ…誰も居ねぇから、好きなだけ泣け。」
しゃくり上げながら何度も愛しい男の名を呼ぶ
気を許した者だけに見せる嗚咽は
もう壊しようのねぇ間柄を誇示しているみてぇだ…。
見せつけてぇのか?
違う
アイツらは俺らの存在に気付いてねぇ。
あれが、自然な姿って事だ。
あの時、あの場で
轟は唯一ハイリの全てを理解して背を向けた。
いつも自分のペースで
翻弄してやがるだけの男じゃねぇ。
(敵わねぇんじゃねぇか。)
あの男に対してこれを思ったのは初めてじゃねぇ。
だが
一度目より遥かに決定的なモンに思えた。