第23章 【空色】自立神経失調症
~Side爆豪~
放課後は
いつもより遅れてやってきた。
いつも教室が割れんじゃねぇかってくれぇ
うるせぇクラスの奴等だが
流石に今日は各々思う所があんだろう。
せっつかれ、追い出すように帰宅を促されようが
特に誰も口を開くこともねぇ。
出る際に振り返り見た教室には
主を待つ鞄のみの机が二台、妙に浮いて見えた。
「結局戻って来かったな。」
校舎を出た途端の一言。
上鳴の言葉に主語は無かった。
それでも何を言わんとしてるかぐれぇわかる。
(いつの間に一緒に居んだコイツら…。)
舌打ちをしようが気にもしねぇ
さも当たり前のように
さも一緒に帰るかのように
並ぶ男はもう一人。
「ああ…。」
切島だ。
無視しようが気にもしねぇ
耐性ありすぎだろ
こいつらはいつもこぞってイラつく原因だ。
ただ今日は違う
元からイラついてんだ。
ヴィランの襲撃後の轟のあの態度
ハイリに向けた後ろ姿が脳裏をよぎる。
(だってのに…)
アイツだけは教室を出る気配が一切なかった。
帰れと促す教師すらそれを黙認しているかのように
まるで、アイツだけは待つ権利があるとでも言わんばかりに
まばらに動くクラスの奴等の中
あの男だけが静止していた。
(クソが…。)
朱に染まる空は地をも同色に
そこに本体よりはるかに長い影が伸びる。
逢魔が時
ふとそんな言葉を思い出した時だった。
「おい、あれ…。」
どっちの声かもわからねぇ
その一言に顔を上げる。
二人揃って後方を振り返る
その視線を追うと十数メートル先で一台の車が静かに停止するところだった。
夕日を遮り逆光で一面黒に見えるその車両。
窓の中は不鮮明
だがわかる
控えめに開いたドアからそろそろと降ろされた足。
見えたローファーが
零れた夕日の光を鈍く反射した。
警察車両に送り届けられた女子生徒は
夕暮れがその表情を隠す中
校舎へと逃げるように駆けて行く。
いつもの金色に近い茶髪は朱を受けてそのトーンを落とし
ウエーブの影が際立って見えた。