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【ヒロアカ】UAシンドローム【轟焦凍R18】

第23章 【空色】自立神経失調症




「大丈夫かい? 怪我は?
怖かっただろう? もう大丈夫だ…。」

「あ、いや…私は全然…。」



歳は40半ばと言ったところか
明るい茶の髪に色白の肌
どこか年齢不詳な雰囲気を醸し出すこの中年男。
案ずる言葉の割にモスグリーンの瞳は穏やかに見える。

本当に心配しているのだろうか?
思わず問いたくなってしまう程だ。

ベージュのスーツを上品に着こなした
長身で細身な優男は
ハイリを抱きしめたまま頭を撫で
細いウエストに手を回しては背を擦る。


その無遠慮な手は誰よりも先に
すぐ隣に居た少年によって捻りあげられた。

溜まった鬱憤を晴らすがごとく
掴んだ手が唸りを上げる。


「オッサンッてめェ…変態行為も大概にしろやッ…。」

「爆豪くんっ違うっ!」


そして、ハイリの制止も待たずに
爆発音は轟いた。

間髪入れずになった轟音、あんぐりと口を開けたままの生徒たちはその様子に何か言わんと喉を震わせる。
だが、
飲み込んだ叫びが空気を震わすのはここからだった。


「お父さんっ大丈夫っ!?」

「「「お父さん!?」」」


声を揃えて復唱する。
なかなか息の合ったクラスメイトに説明するのは
委員長飯田だ。


「あちらは楠梨くんの父、楠梨誠氏だ。
警視庁に勤めていると聞いていたんだが…。」


まさか他県にある娘の学校にやって来るとは
そんな面持で
見るからに不良な男子生徒と対面する男を見やる。

忘れていたが委員長
ハイリとは旧知の仲


そう言えば、親同士が知り合いだった…
そんなことを言っていた気がする


クラスの面々は
かなり昔のようで割と最近の記憶を引っ張り出して
また視線を戻す。


そう聞かされると不思議なことに
上品な印象の壮年の男に見えて来る。

しかし…髪色、瞳の色、面差し
どこをとってもハイリと似てやしない。

前に担任が言っていた通り
やはりハイリは母親似なのだろう。

それでも父と聞かされて疑いの余地が無いのは
委員長の言葉だったからか
それとも、この僅かな間にも伝わって来る溺愛ぶりからか。

お父さんと呼ばれた男は
己が右手を爆発した少年をまじまじと見下し
大袈裟にお道化ながら口を開いた。


「ハイリ、まさか君の大切な人とは
彼の事かい?」



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